体験ギフトカタログのソウ・エクスペリエンス
もう一社は、いろんな働き方を受け入れているということで紹介されたソウ・エクスペリエンスです。
40人ほどのベンチャー企業でギフトカタログを扱っている会社ですが、ほかのギフトカタログと一線を画しているのは、”体験”をギフトするというコンセプトです。
カタログを見ると、いろんな”体験”チャンスが載っています。
たとえば、
- ホエールウォッチング
- モーターパラグライダー
- 手拭い染め
- 陶芸
- カヌー・カヤック
- 藍染め
- 織物
- フライトシュミレーター
など。
ほかにも、スパ・エステチケット、カフェチケットなど分野を特化したカタログもあれば、53万円と高額ですがヘリをチャーターできるチケットもあります。
ある夫婦は、会社のイベントでこのギフトカタログが当たったということで、パラグライダーの体験チケットを利用しました。
パラグライダーを体験した後の男性のひと言。
「パラグライダーは自分からは来なかったと思う。ギフトをもらったので、それじゃ今回やってみようかと背中を押されたような感じ。」
こういう機会がなければ来なかったと男性は語っていますので、体験ギフトカタログは、そのような未体験者に新しい体験の扉を開くのに一役買っていることが分かります。
人材確保に困ったことがない会社
2005年創業で、最初の5年ほどは業績も苦しい状況が続いていましたが、2011年以降、順調に業績を伸ばしています。
社長は西村琢氏(35)。
事業急拡大中ですが、人材確保には困ったことがないというソウ・エクスペリエンス。
直近1,2年に寄せられた履歴書だけでも100枚近く。
その理由は「いろんな働き方を認めているから」と西村氏。
子連れ出勤OK
その一つが子連れ出勤OK。
オフィスの中は、子どもでいっぱい。
子どもを膝の上に載せながら、パソコンと向き合って仕事をしている社員も。
待機児童ゼロを標榜しながら、なかなか実現しないこのご時世、保育所の費用もかからず、子持ちの主婦やシングルマザー・ファーザーからの受けが良さそうです。
親が仕事で面倒を見れないときは、他の社員が見るようにしています。
ここで働いている一人の主婦のインタビュー。
「子どもを産んだ後になかなか保育園に入れなかった。働きたかったです…、子どもと一日中家にいるのってかなり大変なことで…。外に出るきっかけができて良かった。」
ソウ・エクスペリエンスは、こうした働きたいママの受け皿の一つになっているようです。
大人子どもごちゃまぜの今の状況を、西村氏は「“気づき”を与えられる」と高く評価しています。
子連れ出勤OKが誕生したいきさつについて、
社員がまだ10人くらいのときに、一人の社員が出産で辞めるかもしれないという状況が生じ、その社員に抜けられると穴が大きいということで、「本人が嫌じゃなかったら子どもを連れてきてもいいんだよ」と話したところからスタートしたそうです。
二足のわらじOK
営業担当の一人の女性社員は、二足のわらじで仕事をしています。
彼女はソウ・エクスペリエンスが副業を許しているということで入社した転職組。
大学でフードビジネスゼミの講師もしています。
フードビジネスのノウハウが今の仕事にも生かされているようで、彼女は先ほど取り上げたカフェチケットや泊まれる高級レストランの体験など、年間50本もの体験ギフトを実現させています。
西村氏は、「副業で出会う人やそこから湧いてくるインスピレーションも無視できない」と語っています。
これが普通
子連れ出勤にしても、副業にしても、西村氏は何か特別なことをしているという意識はなく、これが「普通」「当たり前」と強調していました。
まとめの話し合いの中で
村上氏:
経営者が従業員のことを本当に真剣に考えないと、生産性も上がらないし、優秀な人材も来ないということなんじゃないかと思うんですけど。
西村氏:
せっかくの人生なので楽しく働いてほしい。それが何よりですね。楽しいものを作っているので、贈り物、ある種の晴れ舞台のようなものを作っているので、それを作っている社内がギスギスしていたら単純に嘘になるし、そんな働き方をしていたら自信もなくなると思うんですよね。
村上氏:
従業員が自分の能力を最大限に発揮できることが大事だと思うんですね、事業規模が違っても、会社というものは。
仲井戸氏:
充実感ですよ、経済的な問題もひとつだし、充実感。これを成し遂げさせてあげる。こちら(ソウ・エクスペリエンス)はおもしろいというのを満たしてあげるような、これも”従業員ファースト”。それを根底根本に考えないと、なかなかこれからの時代の企業の成長というのは難しいのかもしれない、そんな気がしますね。
- 公式サイト→SCSK
- 公式サイト→ソウ・エクスペリエンス
忠誠心からの脱却ー村上龍氏の編集後記
「働き方」がトピックになっている。政府は「働き方改革実現会議」を発足させた。
信じられないような長時間の労働で、心身を病む人、自殺者も出て、社会的な危機感が生まれている。
今、残業は、生産性低下など、諸悪の根源のように言われているが、かつては常識であり、美徳でもあった。「残業」は文化的な問題でもある。
「身を粉にして、自らを犠牲にして組織に尽くす」。いまだに美談だ。だから、残業を減らすのは難しい。
重要なのは、忠誠心の利用・依存から抜け出し、「個別の信頼」を築くことなのかもしれない。
まとめ
効率を求めれば利益が得られる、確かにそうかもしれませんが、それは労働力の搾取や強制の上に成り立っています。
人を人として認めない会社運営は、必ず行き詰まりを迎えます。
効率よりも尊重。
人は認められ感謝されると、自発的に働き始めます。
それが結果として、生産性の向上・高効率へとつながります。
一見、遠回りのようですが、実はそれが王道なのです。
経営者が、自分も従業員と同じ人間であるということ、自分が従業員ならどのように扱ってほしいかを真剣に考えること、それがスタートなのではないでしょうか。
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