うつや対人恐怖症、パニック障害などを改善する方法の一つとして認知療法があります。
そこで用いられているアプローチは、うつなどを患っていない人でも考えの歪みを直す”気づき”を与えてくれます。
職場での人間関係が辛い・しんどいと感じているのは、もしかすると自動思考が影響しているのかもしれません。
自動思考とは?
人はだれでも現象に対するその人独自の反応があります。
同じような場面に遭遇してもAさんはAさん特有の、BさんはBさんの特有の反応を示します。
反応を示すときに頭の中に何かしらの考えが思い浮かぶものですが、それは往々にして瞬間的なもの、即時的なものです。
つまり考えて考えて導き出したものというより、条件反射的に思い浮かぶものです。
このように場面場面ごとに瞬間的に条件反射的に頭の中にパッと思い浮かぶ考えやイメージのことを認知療法では「自動思考」と呼んでいます。
うつ状態の場合、この自動思考がマイナス思考であることがほとんどで、その人の感情や行動にマイナスの影響を与えます。
認知療法は、この自動思考に働きかけ、うつ気分を和らげ行動の改善を図っていきます。
考えが気分に影響する
先ほども述べたように、認知療法で言うところの「自動思考」とは、出来ごとに対して自然発生的に思い浮かべてしまう考えのことですが、これがマイナスの考えであればあるほど気分は落ち込み、ストレスが溜まっていきます。
マイナスの自動思考として、例えば次のようなものがあります。
出来ごと1:同僚に挨拶したが無視された
自動思考1:同僚に嫌われているに違いない
出来ごと2:メールをしたのに返事が返ってこない
自動思考2:無視されているに違いない
出来ごと3:今日はまだ誰とも会話していない
自動思考3:仲間はずれにされているに違いない
出来ごと4:明日会議で発表する
自動思考4:きっと上手く話せないだろう
出来ごと5:上司に進捗状況を説明する
自動思考5:きっと怒られるだろう
出来ごと6:友人の招待を断る
自動思考6:もう二度と誘ってくれないだろう
出来ごと7:挨拶するタイミングを逸した
自動思考7:嫌われたに違いない
出来ごと8:仕事でミスをしてしまった
自動思考8:自分は何もできないダメな人間だ
出来ごと9:パーティに出席しないといけない
自動思考9:どうせだれも声をかけてくれないだろう
いかがでしょうか?
もしかすると自分もこんな感じだ、と思い当たる節があるかもしれません。
出来ごとに対していつもこのようにマイナスの考えが思い浮かぶとすれば、その人の気分はどうなるでしょうか?
どんどん落ち込んでいくのが目に見えています。
そうすると、その人の行動もマイナスの方向に向かいます。
「嫌われているに違いない」と思っているので、相手を避けるようになるかもしれません。
「きっと上手く話せないだろう」と思っているので、本当に上手く話せないでしょう。
「きっと怒られるだろう」と思っているので、びくびくして話してしまうかもしれません。
「自分は何もできないダメな人間だ」と思っているので、できる仕事も失敗する可能性が高くなります。
マイナスの自動思考が悪循環を生む
上の例から分かるように、マイナスの自動思考を持っていると、マイナスの気分が生まれ、マイナスの行動をしてしまいます。
そしてそれがまたマイナスの自動思考を強化してしまうという悪循環が生じます。
これが繰り返されることによってある人は極度の気分の落ち込みを経験し、うつ状態になります。
ですから、ストレスを軽減するには自分の中にあるマイナスの自動思考を見つけることが大切です。
マイナスの自動思考を見つけるには
では、どうやってマイナスの自動思考を見つけることができるでしょうか?
書き出すことが助けになります。
状況を書き出す
どんな状況のときに嫌な気分になるか、その状況を書き出します。
仕事上の人間関係が疲れるのであれば、
- 誰といるときでしょうか?
- どんな話をしているときでしょうか?
- 仕事中でしょうか?
- 仕事を終えてからの付き合いでしょうか?
- 取引先との関係でしょうか?
など、どんな場面で嫌な気分が生じるかを具体的に書き出してみましょう。
気分を書き出す
状況を書き出したなら、そのときに生まれる嫌な気分を書き出します。
- 不安な気分が起きるでしょうか?
- 怒りに近い気分が起きるでしょうか?
- 過度の緊張が生まれるでしょうか?
- 泣きたくなるでしょうか?
- 胸が苦しくなるでしょうか?
- 焦りの気持ちが出てくるのでしょうか?
その場面場面で生まれる気分を記録しましょう。
二つ三つ異なる気分が同時に生じるのであれば、それらをすべて書き出します。
考えを書き出す
次に、なぜそういう気分に自分はなるのだろう?という疑問に答えます。
嫌な気分になったときに思い浮かんだ考えを書き出してみましょう。
こんな風に感じたから、あんなふうに感じたからと言うのでも構いません。
言葉ではっきり書き表せないならイメージでも構いません。
嫌な気分が生じたときに思い浮かんだ考えやイメージを書き出してください。
それを1週間か2週間続けると自分の自動思考の傾向や特徴が見えてきます。
どういう自動思考を持ちやすいのかが目に見える形ではっきり分かるようになります。
またどういう状況のときに嫌な気分になりやすいのかも分かるようになります。
それが分かれば、もしその状況が事前に回避できるようなものなら、次から遭遇しないよう前もって自分の生活を調整できます。
こうやって自分にかかるストレスを少しでも減らします。
行動を書き出す
マイナスの自動思考を書き出したなら、それが行動にどんな影響を与えていたのか書き出してください。
行動と思考の関連性がはっきり分かるようになります。
自動思考と現実を比較する
最後に書き出したマイナスの自動思考を見て、それが本当に現実的な思考なのかを考えてみましょう。
本当にそうか?と自問します。
たとえばメールが返ってこなかったときに「無視されたに違いない」という自動思考があるなら、本当にそれ以外の要素はないのだろうかと考えます。
「忙しくて見ていないだけかもしれない」
「見たけれど返事をするのを忘れているだけかもしれない」
返事がない要素がほかにもないかを考えるなら気分が変わります。
状況に対する考えを一つに絞らない、ほかの可能性がないかを考えるようにする習慣を持つと、気分の落ち込みを防ぐことができストレスが軽減されます。
最近、人間関係に疲れてきたなと感じたら、自分の中にマイナスの自動思考ができていないかどうかチェックしてみてください。
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