結婚している女性にとって、夫の浮気とそれに伴う離婚は感情的精神的ストレスがマックスになるものの一つです。
信じていた相手に裏切られたショックやこれから一人で子どもを育てていかなければならない不安や焦りなど、感情面で受けるダメージはそれを経験した人でなければ十分に知ることはできません。
浮気が数年に及んでいて、発覚したときには夫から謝罪の言葉もなく、逆にバカにされたり離婚を突きつけられたりしたなら、心はさらにより深く傷つきます。
この傷をすぐに癒すのはむずかしく、数年経過しているのに気持ちが全然上向かないという人は少なくありません。
元夫に対する感情に対処する
数年たっても気持ちがすぐれないのは、元夫に対する複雑な感情が関係している場合がほとんどです。
心の中に残っている何とも言えない怒りが自分の気持ちや考えを混乱させます。
まず押さえておきたいのは、元夫の浮気が発覚したときに抱いた怒りは正当なものです。
元夫のしたことは裏切りであり、怒りは嘘をつかれ続けてきたことに対する正常な反応です。
その怒りが十分に昇華されずに今でも心に残っているなら、身体や精神に影響が出ます。
早く忘れるようにと言われたら
「そんなことはさっさと忘れて前を向きなさい」と言われることがあります。
これは一見当を得た言葉です。
当人もできればそうしたいと思っています。
しかし最終的に「忘れる」、つまりほとんど思い出さない、思い出しても今の生活にほとんど影響が出ない程度の状態にするにはそれなりの段階を必要です。
怒りの感情を大切にする
まず自分の抱いた怒りの感情を大切にしましょう。
それを最初から無視し続けると、駄々をこねる子どものようにその声はどんどん大きくなり、心のなかに居座り続けます。
すべきことは怒りという感情に対して「アナタはまったく正しい」と認めてあげることです。
怒りという感情に対してマイナスのイメージを持っている人は多くいますが、すべての怒りが間違っているのではありません。
正しい怒りというものがあるのです。
認めてあげること、これがまずすべきことです。
心の中にある怒りの感情を子どものように抱きしめ、そのつらい気持ちを受け入れ、一緒に泣くこともできます。
「そう、辛いよね、悲しいよね」と声を掛けるのです。
つまりこれはその当時の自分を、苦しんだ自分を、ショックを受けた自分を受け入れる行為、慰める行為です。
あの時の自分の感情は正しかったという肯定感を持つことが自分を癒す大事な一歩です。
この肯定感を忘れる必要はありません。
それは当人の存在価値とつながります。
怒りの手紙を書いてみる
今でも残っている怒りの感情を手紙に書くのが助けになる場合もあります。
書き出すという行為は、自分の内側にある感情を吐露する機会となります。
書くことによって怒りの放出先ができ、怒りを昇華させる助けになります。
なぜ怒っているのか、何を怒っているのか、何をされて怒っているのかなどを書いていきます。
書いているうちに、もしかすると自分の怒りの要因には実はいくつもの種類があったことに気づくかもしれません。
今となってはその要因となるものを解決することはほとんどできないかもしれませんが、書くことによって心が整理され、自分の怒りを客観的に見つめることができるようになっていきます。
「自分はこういうことで怒ってたんだな、それなら納得できるな」と思えることが多々出てくるでしょう。
怒りという感情と少しずつ距離を取れるようになります。
最初は怒りの感情をしっかりと受け止め、慰め、肯定し、それから少しずつ距離を保ちます。
怒りは繰り返すことがある
少しずつ客観的に見ることができるようになったと思えても、何かのきっかけで怒りがふつふつと蘇ることがあります。
それは仕方のないことです。
つまりそれだけの仕打ちを受けたのです。
「まだ気にしているの?」と心ないことを言う人がいてもそれを気にしてはいけません。
回復にはそれなりの時間がかかり、人それぞれです。
こうした繰り返しのサイクルを通して、少しずつ解放へと向かっていくのです。
これまで怒りという感情と真正面から取り組む機会がもしなかったのであれば、一度この方法を参考にしてみてください。
怒りを無理に押さえ込んだり忘れたりしようとすると、うつ的感情が引き起こされてしまいます。
「何年たっても怒りを抑えられない自分はおかしい」というまったく見当違いの結論を出し、自分を余計に苦しめてしまうこともあります。
正しい怒りを押さえつける必要はありません。
ただし、やはり怒りという感情をずっと持ち続けると身体的にも感情的にも大きな負担になるので、この感情を昇華していく作業は続けないといけません。
自分の存在を肯定する
怒りを昇華する作業の一環として大切なのは、自分に対する正しい評価です。
夫の裏切り行為に直面すると、自分の存在価値に自信が持てなくなってしまう方が多くいます。
おとなしい性格の方、もともと自分に自信のない方はその傾向がより顕著になると言えるかもしれません。
それは無理からぬことですが、夫の裏切りは決して被害者である当人に落ち度があったからではありません。
不貞を働いた元夫は自分の言い分や状況を良くするために、相手のことを誹謗中傷するでしょう。
あることないことを話して何とかして自分を正当化するでしょう。
しかしそのすべては詭弁です。
何一つ真実はありません。
言われることに少し思い当たる節があるとしても、それが元夫の浮気を正当化する理由には決してならないのです。
浮気は道を外れた行為であり、それを正当化できる理論など一つもないのです。
ですから決して自分を責めてはいけません。
自分を責めると心が弱くなり、相手の詭弁を受け入れやすくなります。
それを許してはなりません。
相手の話した言葉が頭を駆け巡るのであればそれを止めてください。
自分の存在価値は元夫が決めるのではない
当人の存在価値を決めるのは元夫ではありません。
これまで自分の精神的支柱と考えていた人が突然目の前からいなくなると、とてつもない不安に襲われ、自分の存在価値さえ見失いそうになります。
しかし被害者であるその方は、元夫のおかげで存在しているのではなく、彼がいなくなった今でも間違いなく貴重な存在なのです。
自分の中にある良いところにこれまで以上に目を向けるようにしましょう。
誠実、純粋、勤勉、こうした資質は高く評価できます。
人に対する思いやりがありますか?それは本当に素晴らしいことです。
人に与えることや人のために働くことが好きですか?それは心を幸せにするビタミン剤です。
それは自尊心を高め、その時は悩みを一時でも忘れることのできる時間ともなります。
自分には良いところなんて一つもない、という方がおられます。
それは大きな間違いです。
もしお子さんがいるなら、「お母さんのどんなところが好き?」と聞いてみるとよいかもしれません。
「ごはんがおいしい、ほめてくれる、やさしい」etc.
涙がこぼれるくらい、いっぱい良いところを教えてくれるでしょう。
自分の良いところに「気づく」なら、もう元夫の言う詭弁に惑われる必要はなくなります。
たとえ何かを言われても、それを心に住まわせないよう自分を守ることができます。
自尊心が高まるにつれ、以前心のなかで大きな存在だった元夫との問題がどんどん小さくなっていきます。
それに伴い、怒りの感情も以前ほどには感じなくなるでしょう。
その行程は一朝一夕ではなく、ときに精神的な苦痛を生じさせるかもしれません。
しかしその向こうにあるものは、悲しみや怒りに打ちのめされている自分ではなく、問題を「忘れ」前向きに生きている自分なのです。
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