念願かなって転職したものの、もう次の転職を考えているあなた。
なぜそうなってしまったのでしょうか?
キャリアアップを図って転職したものの、現実に直面し対応しきれていない人がたくさんいます。
役職に釣られて転職すると…
以前の会社で既に管理職に就いていたAさんの事例を紹介します。
Aさんが勤めていたのは、その業界では誰もが知っている大手グローバル企業。
それなりの安定と収入がありました。
そのままいれば、すぐではなくとも、さらなる上を目指せる会社であったにも関わらず、上昇志向が非常に強かった彼は、その状況に満足できず、転職を決意。
規模はそれほど大きくない中堅のグローバル企業に、前職より更に上の管理職で迎え入れられました。
表面上、キャリアアップに成功。
しかし、キャリアアップがかなったと喜んだのもつかの間、大変な日々が始まります。
会社の営業成績が悪化し、本社からの要求が日増しに厳しくなります。
以前の会社との質的レベルの違いにも慣れることができません。
前の会社の社員なら当然できて当たり前ということが、新しい会社の社員には一から教えていかなければならない状態。
Aさんはチャレンジ精神が旺盛な人ではなかったため、こうしたことを前向きに捉えることができず、やるべき仕事の多さとストレスに精神が参ってしまいました。
彼の場合、自分がほしいと思ったものに目が行き過ぎ、状況を俯瞰的に見ることができなくなっていました。
肩書きを求めて急いで転職すると痛い目にあう
上昇志向が強かったAさんは、人生において最も大事だったのが「名を得る」ことでした。
肩書きが自分の存在価値であり、周りから尊敬され認められるために必要、という人生哲学が、今回の失敗に影響を与えました。
転職先が同業種ということもあり、あまり深く考えずに、役職の高い仕事に飛びついてしまいます。
管理職の仕事を保証している会社に転職する前に
管理職に就きたいと思っている人が、管理職募集の求人に心惹かれるのは当たり前です。
しかし実際に行動を起こす前に、まずやっておくべきことは何でしょうか?
求人先を調べる
Aさんの場合、転職先となるかもしれないその会社のことを十分に調べずに転職しました。
仕事上、名前を聞いたことがあり、同業であったというのも関係していました。
大手で仕事をしていたので、中堅でも問題なくこなせると判断しました。
そのように高をくくったことが、そもそもの失敗でした。
たとえ同業であろうと、規模が前職より小さかろうと、求人先を前もって調べるのは、求職者が最低限やっておくべきことです。
決算報告書を見る
上場企業なら、財務諸表を作成して公表することが義務付けられています。
転職希望先が上場しているなら、「損益計算書」と「貸借対照表」を確認しましょう。
最近は、Web上で決算公告をしている企業も多くなっています。
企業の自社サイトで公開していないなら、有価証券報告書のサイトで確認できます。
損益計算書
損益計算書は収益と費用をまとめた報告書です。
これを見れば、その企業の経営成績が分かります。
貸借対照表
貸借対照表は企業の資産、負債と資本の状態を示します。
どういう形で資産を所有しているか、どんな負債があるか、財政状態の安定性はどうかなどが分かります。
決算報告書を公開していない企業
非上場企業は、ほぼ決算報告書を開示していません。
有価証券報告書作成の義務もありませんので、有価証券報告書のサイトで確認することもできないでしょう。
調べることはできますが、正確な情報を知るには手間がかかるようです。
管理職として、その会社に転職する場合、経営成績にも影響を与える立場で仕事をするわけですから、経営状態の悪い企業に転職するのは愚の骨頂です。
上場企業への転職を考えているなら、少なくとも財務諸表の数字を読めるようにはしておきましょう。
就職四季報を見る
就職四季報の中にも、業績データが載っています。
他にも離職率や有給休暇の消化率など、社員の働きやすさを示すデータも記載されているので、転職前には参考にすることをおすすめします。
この記事の中でくわしく説明しています。
口コミサイトも参考に
会社に関する口コミサイトがたくさんありますので、それらも参考にできます。
ただ、内容のすべてが信頼できるわけではありませんので、注意が必要です。
何のために転職するのかをじっくり考える
Aさんの場合、どうしても上の役職が欲しかったというのが転職の主要な理由でしたが、「立場」とは、何としてでも得ないといけない、そういうものなのでしょうか?
「立場、立場」と考えすぎると、その考えが人を縛り付け、追い込んでしまいます。
「役」のために転職なんて、と思うかもしれませんが、案外、キャリアアップをしたいという人の本音は、Aさんと似たり寄ったりです。
「名を得たい」と思うのは人間の傾向と言えますが、名を得る目的は何でしょうか?
- 優越感に浸りたいため?
- 人から羨ましがられたいため?
こうした利己的な動機では、たとえ役職についても、いい仕事はできないでしょう。
役を持つのは、人に奉仕するためです。
より大きい権力・権威を持つのは、人を支配するためではなく、人を幸せにするためです。
そのポジションだからこそ人のためにできることがある、このように役職をとらえているなら、それはいい管理職でしょう。
もしそうでないなら、周りにとって害となる管理者でしかありません。
Aさんの場合、「役」そのものに注意を向けすぎ、それに伴う仕事の大きさや責任の重さを軽視していたと言わざるをえません。
これから管理職の転職を考えているなら、Aさんと同じ轍を踏まないためにも、それを求める動機が何かを熟慮しましょう。
今いる職場で、人間関係も悪くなく、大きなトラブルもないのではあれば、急いで転職する必要が本当にあるでしょうか?
留まるほうが、人生を楽しめるのではないでしょうか?
転職後、またすぐ転職したくなったら
転職先が自分の思った感じではないから再転職したいのでしょうか?
もしそうであれば、今の状態で次の転職を考えても失敗する可能性が大きいでしょう。
転職転落という負のスパイラルに落ち込んでしまうのが必至です。
新しい求人に応募しても、管理職としての態度を問われることにならないでしょうか。
責任感のない人と見られるなら、どうしますか。
そんな人を管理者として雇用したいと思う企業がどれほどいるでしょうか。
ですから、時を待ち、もう少し新しい職場で仕事を続けるのはどうでしょうか。
いま自分に何ができるかを考える
謙虚になり、新しい会社で任されている仕事をこなしてください。
そうすることによって、やり方の改善点が見えてきます。
自分が管理する人に真摯に向き合い、指導しましょう。
会社があなたに期待しているのは、それではないでしょうか。
自分が得てきた知識と経験を新しい会社に還元し、効率化を進めるなら、営業成績の向上もありえます。
それこそ、「役職」に就いている人の本来のあるべき姿です。
人から感謝してもらえる仕事をしましょう。
今はしんどいかもしれませんが、そこで行なったことや経験は、きっと後々の人生に活きるでしょう。
再転職を決めたとしても、次の面接時に語れるものがあるでしょう。
現実から逃げても、なにもいいものは残りません。
残るのは後悔だけです。
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