性暴力という非道極まりない下劣な行為を受けてしまった後、その痛手からどのように立ち直ることができるでしょうか。
その苦しみを癒すには時間がかかりますし、当事者でなければその複雑な思いは決して分かりません。
そのことを理解した上で、これまでこの被害に遭った方たちの助けになってきたアドバイスがいくつかありますので、参考にしていただければと思います。
性暴力被害にあった後の罪悪感に対処する
多くの方が感じる感情に、罪悪感があります。
なぜ被害者なのに、罪悪感を感じてしまうのでしょうか?
その根底にあるのは、自分がミスしたからではないかという不安です。
- 自分がもっとしっかりしていれば…
- 自分がもっと早く気づいていれば…
- 自分の何が相手を引きつけてしまったのか
- もっと何かができたのではないか…
こうした思いが、罪悪感を引き起こします。
被害者であるにもかかわらず、加害者の非道に腹を立てるより、自分が不甲斐ないと感じて、自分に対して腹を立ててしまうのです。
もし家族にも話しているなら、家族の驚きや戸惑い、悲しみも見ました。
- なんでもっと注意しなかったの!
- どうなるかぐらい分かっただろ!
彼らは、自分の動揺から、このような言葉が口から出ることがあります。
しかし「お前のせいだ!」と言われているかのような言い方に、心は傷つき、罪悪感を持つようになります。
家族も苦しんでいるのが分かります。
前のような明るい雰囲気が、今はないように感じます。
「自分のせいで家族が苦しんでいる」
こんな思いも、罪悪感に拍車をかけます。
周りの人が、あなたに罪悪感を持たせることもあります。
本来、加害者が罪悪感を持つべきであり、責められるべきなのも加害者です。
はっきり申し上げますが、性暴力の被害者には何の責任もありません。
ここからは、自分の心との闘いになりますが、周りが何と言おうと、自分は合意していなかった、自分の意思ではなかったと、強く言い聞かせてください。
この言い聞かせが、立ち直るための第一歩になります。
ただ、そう言い聞かせても罪悪感はすぐには消えないでしょう。
数日うまくいっても、その後また罪悪感を持つようになるかもしれません。
しかし、それは後退ではありません。
スタート地点に戻ったわけでもありません。
ちょっと立ち止まっただけです。
気持ちが落ち着いたら、またゆっくりと歩き始めてください。
心の傷からくる喪失感に対処する
性暴力の被害にあった方が抱くもう一つの感情は、喪失感・空虚感です。
自分の存在を肯定化できず、
- 自分はもうキズもので、価値がない
- 今後の人生、何をやっても意味がない
と、思ってしまいます。
しかしそれは間違った考えです。
ぜひとも、払いのけていただきたいと思います。
あなたは、今でも大切な存在で尊厳をもって扱われるに値する人です。
受けた被害によって、あなたの価値が損なわれることはありません。
もしそう思わせようとする人がいるなら、その人が間違っているのです。
被害を受けた方の周りにいる方たちへのお願いとして、自分の語る言葉や示す態度によって当事者に間違った考えを持たせないように、細心の注意を払っていただきたいと思います。
今こそ支えてください、安心させてください。
今こそ助けが必要なのです。
心の傷を癒すためにつらい気持ちを少しづつ吐露する
最初は、自分のつらい気持ちをなかなか話す気になれないでしょう。
周りの人も、それを強制すべきではありません。
しかし語ることは、心の癒しにつながります。
いま抱えている荷は一人で担うには重すぎます。
だれか、ほかの人に手伝ってもらってください。
しかし話す相手は選びましょう。
それはあなたの権利です。
じっくり時間をかけて話を聞いてくれる人、上からや前からではなく真横で寄り添ってくれる人が理想です。
家族がそのような役割を担えればよいのですが、自分が願うような反応を示してくれるとは限りません。(それでも、いつかは自分の身に起きたことを、家族に話せる日がくるかもしれません。)
家族以外のだれかに相談するとなれば、専門的な訓練を受けたカウンセラーに話を聞いてもらうのがベストです。
たとえば、性暴力被害者支援ワンストップセンターで紹介してもらえます。
なかなか話す気になれないかもしれませんが、自分を癒す第二ステップとして話をだれかに聞いてもらうことは、とても大切です。
傷を癒すには時間が必要。焦らない
心の傷を癒すには、時間がかかります。
一歩一歩、ゆっくりと回復していきましょう。
途中で立ち止まっても、大丈夫です。
以前と同じようなペースでできなくても、問題ありません。
今のあなたを大切にしてください。
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