機能不全家族のことを毒親家族と表現することがありますが、その中で育つ子どもは感情面や精神面での成長に問題を抱えやすいと言われています。
毒親家族にもさまざまなタイプがありますが、その環境で育った人は共通点が多くよく似た悩みを抱えています。
そのいくつかを見てみましょう。
毒親家族と言えるもの
どんな家庭が毒親家族と言われるのでしょうか?
例えば、
- アルコールやギャンブルなどの依存症が見られる家庭
- 子どもの教育に熱心すぎる家庭
- 子どもを自分の持ち物のように扱う過干渉な家庭
- 子どもの世話が過保護な家庭
- 子どもに必要なものを与えない育児放棄の家庭
- 暴力が振るわれる家庭
- モラハラが横行している家庭
- 夫婦の関係が冷めきっている家庭
などが挙げられます。
毒親家族の例
ある毒親家族の状況を考えてみましょう。
夫であるA氏は典型的なモラハラ夫で、自分の思い通りにならないことが起きるとすぐにキレて怒り出し、妻に嫌味を言い続けます。
妻はそれに言い返すことができず、ずっと自分の中に不満を溜め込み笑顔がありません。
またA氏は父親として子どもにあまり愛情を抱いていないため、子どもと一緒にいることはほとんどありません。
夜帰ってくる時間も遅く、家庭の中に会話らしい会話はありません。
妻は夫からの愛情がないため子どもの世話が過保護になる反面、自分の機嫌が悪いときは子どもにつらく当たります。
そうした家庭で育つ子どもはどんな大人になるでしょうか?
外部に漏らさないように圧力がかかる
自分の家庭が何の問題もないかのように見せるため、母親から家庭の様子を外で話さないように圧力をかけられます。
子どもには「何の問題もない家庭」というメンツを保つことが求められます。
母親はそのメンツを保つため、子どもに着せる服や食べるものには気を使います。
子どももそれに呼応して、心の中では家のことをよく思ってないにもかかわらず、外では家のことを悪く言いません。
こうした外面を装うことを強要された子どもは大人になっても自分の内奥にある気持ちを人に打ち明けることは少なく、メンツを気にして自分は何の問題もないという状態を保とうとします。
また結婚すると、自分の家庭にも秘密主義を敷くことが多く、家庭の問題を外に漏らさないように家族に命じ外面的なメンツを保とうとします。
父親に対する恐怖が植え込まれる
自分の気に食わないことがあるとすぐにキレる父親がいるため、家の中はいつも緊張状態です。
子どもはその空気を敏感に感じ取り、その怒りが自分に向けられないように顔色を伺います。
こうした子どもは大きくなってからでも権威を持つ人を前にすると緊張することが少なくありません。
また権威を毛嫌いする反面、権力を欲し立場を手に入れれば自分の思い通りにできると考えている場合もあります。
問題が話し合われない
家族の多くの問題が怒りによって終わってしまいます。
何かを話し合おうとしてもすぐに怒られて終わりというサイクルが繰り返されるので、話し合うこと自体をあきらめる空気が流れます。
この環境のせいで、子どもはすぐにあきらめてしまうクセや怒って問題を強制終了させるという悪習慣が身に付いたりすることがあります。
家庭の中で家族に関係した重要な問題が深く話し合われることはありません。
つまり家族会議というものが存在しません。
家族であるにもかからわずお互いが自分の考えや気持ちを言い表す場を持たないので、家族だけど他人という家庭環境が形成されます。
そのため子どもの問題解決能力は伸びず、危機管理能力も乏しい場合があります。
ほかにも家族の問題に向き合っていなくても表面的には家族という機能が働いているように見えるため、問題を先延ばしにする傾向や問題を初めから見なかったことにする習慣を身につけやすくなります。
こうした子どもは大人になって結婚しても家庭内で起きる問題の根本原因を話し合うことはほとんどありません。
自分のしたいことをするようになる
家族としての協力関係が皆無のため、自分のしたいことをする独立傾向が強まります。
家族という枠内に留まることを望まず、そこから出ることを願いますが、それができるようになるまでは家族と自分との間に線を引き、だれも入って来られないようにします。
利己的な行動が目立つようになり、自分の世界に引きこもることが多くなります。
こうした子どもは大人になっても自分と他人との間に線を引きやすく、自分の世界に人が入ってくることを好みません。
感情が育たない
温かい家族とは無縁のため、積極的で友好的な感情が育ちません。
親から愛されているとは思えず、人を愛することや親切にすること、人を思いやることの大切さを学べずに育ちます。
そのため、学校でも社会に出てからでも孤立しやすく、人間関係において問題を抱えることが多くなります。
人への信頼が育たない
子どもは安定した明確な基準というものがない、約束していたことが親の気分一つで反故にされるということを何度も経験します。
また親がいつどんなタイミングで怒り出すか分からない環境で育つので、人を信頼することに難しさを感じます。
こうした子どもは大人になっても常に心に不安を覚え、自分に自信が持てません。
自分の存在価値を見失う
モラハラが横行する家庭では自分がしていることを否定されることが多く、結果として自己評価が低くなり、自尊心が持てず自分を卑下する傾向が強まります。
ひいては、自分が生まれてきた価値そのものにも疑問を抱き混乱することがあります。
大人になってからもこの状態は続き、表面的には問題ないように振る舞いますが、自分はほかの人とは違う、ほかの人より劣っている、自分は幸福じゃないという感情に常に悩み苦しみます。
大きなトラウマを抱えて大人になる
これはモラハラのある家庭環境で育ったある方をモデルにしています。
ここで挙げたものはこの方が感じた、また今でも感じている影響です。
幸いなことに、この方は自分の状況を見つめ直すだけの勇気を持たれたので、今では少しずつ改善が見られています。
モラハラが横行する愛の希薄な家庭で育つと、人は大きなトラウマを抱えるようになり、生活していく上でいろいろ苦労することが増えます。
特に自分と他人との距離の取り方に苦しみ、人間関係に問題を抱えやすくなります。
もちろん同じような環境にいても上に挙げたことが当てはまらない方もおられるでしょう。
ただしよく似た感情や影響を受けてきたと言われる方は少なくありません。
毒親家族で育つアダルトチルドレン
今日、こうした毒親家族で育った方の中には、自分がアダルトチルドレンであると考えている人が増えています。
実はこの一点はとても大切で、自分がアダルトチルドレンであると認識するようになって初めて、複雑に絡み合った感情の問題を解決する糸口を見つけることができるようになります。
上に挙げた方もそうでした。
自分の心の内にある違和感の意味を理解できるようになるにつれトラウマに少しずつ対処できるようになっていきました。
人はみな自分を見つめ直す時間が必要です。
それには自分が育った家庭環境を改めて直視することが必要です。
自分の心に何か違和感があると感じる方、他の人との距離の取り方が難しい方、どうやっても自己評価が上がらない方などは、自分がアダルトチルドレンかどうかを一度お調べになることをおすすめします。
アダルトチルドレンとは決して「大人になりきれていない人」のことではなく、子ども時代の心的ストレスでトラウマに悩み苦しんでいる人たちのことを指します。
これは病気ではありません。
多くの場合、それは不可抗力の要素が多く、なりたくてなったのではないのです。
ですから安心してください。
しかしその影響を最小限にしたいなら、自ら行動する必要もあります。
その勇気ある第一歩を踏まれるあなたに最大限の賛辞を送ります。
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