自分の人生をどう設計するかは個人として行う最も重要な作業です。周りの人にアドバイスを求めることはできますが、最終的な判断は自分がしなければならず、その結果も自分が負わなければなりません。
だからこそ、人生で大きな失敗をしないために内省が欠かせません。自分はどう生きたいのか、どのような人間になりたいのか、しっかり考えることが人生を豊かにする鍵の1つです。
内省とは
内省とは、自分の心と語り合うこと、自分の状態を客観的に直視すること、といわれます。自分を省みることで内面の弱さが見つかり、改善することで成長できます。
毎日忙しい生活を送っているからこそ、立ち止まり座って黙考する時間を取りたいものです。
内省の価値
内省を自分の生活に取り入れると、どんな気づきが得られるでしょうか。
自分の弱さを認めることができる
内省的な人は本当の自分と臆せず対面できる人です。本当の自分とは、表面には出さない心のなかの自分、ひとりになったときの自分です。
本当の自分は、怠惰なところや意地の悪さがあったりするかもしれません。生活に悪影響を与える嗜癖(しへき)があるかもしれません。
内省的な人は問題点が見つかったとき、「大したことではない」とか「生まれつきだから仕方がない」という態度は取りません。問題を軽視せず、改善を図ります。
自分の内面にある弱さを認められるのは人間力の強さであり、バランスの取れた人といえます。自分に対する相応の自信があり、限界は超えないようにしつつも、できることはしっかりと行うので、人から信頼されます。
倫理感のない行動を避けられる
ニュースを見ていると、たとえ社会的な立場があっても自分の欲望を抑えられずに犯罪を犯すというケースが増えているように感じます。
少し前なら行動の抑制力となっていた地位や立場、家族などがまったく機能せず、タガが外れた状態になっているのを見て、欲望のまま突っ走る前になぜもっとよく考えないのかと不思議に感じる人は多いのではないでしょうか。
内省的な人は欲望に対して思考を停止させません。欲望のままに動いた行動の結果をイメージして、自分にどのように跳ね返ってくるか、家族や周りの人にどんな影響を与えるかを真剣に考えます。
内省的な人はまた、自分がしたいと思うことの代償があまりにも割に合わないことがわかるなら、我慢するだけの自制心も持ち合わせています。
人に優しくなれる
内省的であると、自分に弱い部分があることを謙虚に認められるので、ほかの人の弱さをいたわる強さが育ちます。
誰ひとり、完璧にできる人はいません。たとえ自分が他の人よりも優れている部分を持っていたとしても、それは相手を見下げてもいい理由にはなりません。そのことを理解しています。
内省するには心の中に”鏡”を
身だしなみをきっちりするために鏡を見るように、心の内側を正しく知るにも”鏡”が必要です。
心の鏡とは基準のことで、今の自分と比較して、改善点を見つけるためのものです。これはとても大切な部分で、何を心の基準にするかで人生はほぼ決まるといっても過言ではありません。
ロールモデルにできる人、自分の本質を高めてくれる本など、内省するのに役立つ”鏡”を見つけましょう。
内省を続けるには
内省は継続が鍵です。続けることで効果が発揮されます。
取り組む課題を毎日設ける
内省は続けることが大切ですが、それが一番難しいところともいえます。途中でやめないために、課題を毎日1つ見つけて実行することが役立ちます。
課題にできるのは、冷静に話す、親切にする、我慢するなど内面の磨きと関係したもの。さらに、課題すべてに具体的なシチュエーションを考えてみるのもいいでしょう。
たとえば、部下に(だれに)ミスの指摘を(何を)冷静に話す。家で(どこで)ゲームを(何を)2時間(どのように)我慢する、といった感じです。
そして、1日の終りに自己採点。自分なりに努力できた、もう少しがんばれたかも、うまくいかなかった、など3つくらいに分けて評価してみましょう。
新しい課題を際限なく生み出すのは限界があるので、1か月など一定の間隔を設けて同じ課題に取り組んでみるのもいいことだと思います。前とは違う気づきが得られて、自分の成長を実感できるでしょう。
人と比較しない
内省は、人と比べたり競争したりするものではありません。人と比較すると自分を卑下するか、人を見下すかのいずれか2つのうちの1つにたどり着きます。そのどちらも内省に悪い影響しか与えません。
自分の成長を人と比較するのは意味のないこと。あせらず、じっくりと自分の成長を楽しみましょう。
そうこうしているうちに、「最近、〇〇さんは少し変わったね」と親しい人から言われるようになったら、成長していることの確実な証し。その日は、自分にご褒美をあげてください。
完璧主義者にならない
なりたい理想の自分に少しでも早く近づきたくて、つい完璧主義に走る人がいます。
目標を追いかけることは悪いことではありません。しかし、「こうあるべき」「こうでなければならない」という考え方は自分の視野を狭めてしまうだけ。不必要なストレスを抱えて、心が潰れてしまうことさえあります。
内省には心の余裕が大切。この過程は一生涯続くものですから、早急に結果を求めず、じっくり腰を据えて、自己改革に取り組みましょう。
失敗しても投げ出さない
同じような失敗を繰り返すことがあっても、さじを投げないようにしてください。たとえば、すぐに怒ってしまうという弱さを改善したいのに、なかなか直せないという場合でも、諦めないことです。
自分を甘やかさず、改善する意識を持ち続けるなら、必ず変化していくことができます。
まとめ
人は自分の生き方に最終的な責任を持たなければなりません。自分の欲のままに生活するなら、人に迷惑をかける、人に危害を加える人間となってしまうでしょう。
内省は自分の欲をコントロールする助けになります。もちろん、一朝一夕に行えるものではありません。しかし、「継続は力なり」の言葉どおり、一生涯続けることで内面の自分を変えていくことができます。
道のりは長いですが、その成果はお金では決して買うことのできない、世界にたったひとつの宝物となるでしょう。
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