アダルトチルドレンと呼ばれる人の中には嗜癖(しへき)行動で苦しんでいる方が少なくありません。
嗜癖行動とは何でしょうか?
どんな要素が関係しているのでしょうか?
嗜癖行動の原因となるもの
機能不全家族(今では毒親家族と言われることがある)で育った人の多くは心にトラウマを抱えて大人になっています。
そして、そのうちのほとんどの方が自分の家族が機能不全家族と認識していません。
しかし、心の中では「この家族はおかしい、こんなの家族じゃない」という違和感をもっています。
言葉でうまく説明できなくても心は反応しています。
家庭の中で本当の自分を表現することができず、もどかしい思いをしてきました。
家族の不調和に合わせることを強要され、自分の考え・感情が尊重されず、時には自分の存在さえ否定されてきました。
そのため、家族の中で本当の感情を表わすことが次第になくなり、自分ではない別の誰かを知らず知らずに「演じる」ようになります。
演じ続けるうちにそれがあたかも本当の自分かのように錯覚してしまいそうになりますが、それは自分を守るために作り上げた「偽りの自分」「鎧」でしかありません。
嗜癖(しへき)とは?
こうした家庭環境の中にいると、その人の内側では自分らしさを表現できないことから来る膨大なストレスが生まれます。
内なる心はもがき苦しみ、何とかして自分が安らかになれる場所や方法を探し求めます。
それが見つけると、続けるなら多くの害悪を被ることが分かっていてもやめることができなくなります。
この強迫的な行動を嗜癖(しへき)と呼んでいます。
この行動は自分が求めてやっているため一時的な快楽や喜びを感じますが、ほとんどの場合その後で強烈な後悔の念や自分に対する嫌悪感が襲います。
やめないといけないのにやめることができない自分を卑下し自尊心がボロボロになります。
嗜癖は一つの対象をずっと続けることもありますし、状況や年齢によって対象が変化していくこともあります。
嗜癖はその原因となるものが同じであることがほとんどなので、2つ3つの異なる嗜癖を同時に抱えることもあります。
嗜癖が形成される過程とは
嗜癖は良くない習慣が長期的かつ継続的に行なわれる結果として形成されます。
その過程に含まれるものは何でしょうか?
子供のころの体験
子供のころの体験が大きく影響します。
子どもが親に依存したい、甘えたいと思うのはごく自然なことです。
親はその欲求を満たしてあげるべきです。
しかし子どもがそれを求めても拒絶する親がいます。
ほかにも子どもがまだ十分大きくなっていないうちから自立することや家族の中で責任を持つことを要求する親もいます。
それとは真逆で子どもを守りたいがあまり過保護になってしまう親もいて、子どもの主体性や自主性を無視し、知らず知らずのうちに親の願いや基準を押し付けてしまっています。
親子の関係がこのように極端なものであるとき、子どもの心には大きな不満が生まれ、かんしゃくを起こしたり殴ったり蹴ったりと、周りからすると「聞き分けのない子」と映るような行動を取るようになります。
見捨てられ不安
子どものそうした行動は親子関係の改善を求める声なき心の叫びなのですが、それを受け止めてもらえないと心に強い不安が生まれます。
拒絶されたり早い段階での親離れを求められる子どもは、自分は見捨てられるのではないかという不安を持つようになります。
過保護な親のもとで育った子どもにも見捨てられ不安が起きるのは、子どもの主体性や自主性が奪われた結果、親がいないと生きていけないのではないかという不安を持つようになるからです。
否認
こうした不安な気持ちを払拭するため、成長するに伴って否認という感情が生まれます。
つまり甘えるとか依存するという欲求があることを否定し、自分は誰にも頼る必要はない・誰の助けも必要としないと思うようになります。
「自分は一人でも生きていける」、このことを証明するためにチャレンジします。
しかし失敗するので、大きな不安感や挫折感、自己否定、怒り、寂しさなどが起こります。
嗜癖行動
その結果、それを紛らわすために自分がホッとできる空間を探し求めます。
その時に行なえること、これが嗜癖行動の原型となります。
その行為によって負の感情がリセットされます。
そして、改めて自分の強さや主張を証明するために挑戦しますが失敗します。
そうすると、不安を解消するため自分がホッとできる空間に逃げ込みます。
この繰り返しによって嗜癖行動は生活の中に強く深く組み込まれてゆきます。
これが嗜癖行動が形成される過程です。
こうやってできあがった嗜癖の習慣は、その後の人生の中で問題があったりストレスを感じたり挫折感を味わったりするたびにその人が逃げ込む場所、ホッとする場所となります。
そのためなかなかやめられないのです。
嗜癖行動の弊害
しかし嗜癖行動が重度化すると、いつしかそれが生活の中心になり本当に離れられなくなってしまいます。
経済的リスクを負う危険や社会的地位の崩壊を経験する危険があってもやめません。
それがない生活が想像できず、やめることを考えただけで強烈な焦燥感に襲われます。
嗜癖行動は人の正常な活動を妨げ、人間関係を壊します。
ですから少しでも早くやめなければなりません。
嗜癖行動をやめるには
自分には嗜癖行動の問題があることを認めなければなりません。
これが一番重要で一番難しい点です。
しかし、これをクリアしなければ改善はありません。
認めるとは信頼できる人に問題を話すことです。
そうして初めて改善を図る手がかりを持てるようになります。
嗜癖行動をやめられるかどうかはその人自身の意識にかかっています。
自分には人には言えない行動があると分かっている方は、今すぐにでもその問題を信頼できる人に打ち明けましょう。
それは非常に勇気が必要なことですが、自分の人生を変える最大のチャンスです。
その勇気ある一歩は賞賛に値します。
ぜひ嗜癖行動から抜け出し、新しい人生を掴み取ってください。
コメント