家族が認知症になったら「精神障害者保健福祉手帳」の申請を

あまり知られていませんが、認知症患者も精神障害者保健福祉手帳を持つことができます。

わたしは親の認知症がかなり進んでから、手帳の取得ができることを知りました。もう少し早く知っていればと思っています。

この記事では、手続方法や交付後に利用できるサービスなどを紹介します。

精神障害者保健福祉手帳とは

精神障害者保健福祉手帳とは、一定程度の精神障害の状態にあることを認定する手帳です。

統合失調症やてんかんなどの病気だけでなく、認知症も交付対象です。交付は各自治体がおこなっています。

手帳があることで、精神障害者が生活を送るうえで必要なサポートや福祉サービスを受けられます。

具体的には、医療機関や公共交通機関サービスの優遇、精神科診療の減免制度、雇用支援や税金の減免などです。

認知症になったら考えるべきこと

認知症になると認知機能や記憶力、判断力などが低下していきます。

料理や洗濯、買い物が難しくなる、金銭管理が大変になるなど日常生活に支障が出たり、社会的孤立から心理的な問題が生じたりします。

精神障害者保健福祉手帳は、そのような状況に対処する1つの方法です。

福祉サービスや優遇制度を利用できるだけでなく、認知症であることを周囲に知ってもらうことで、社会的な支援や理解も得やすくなります。

精神障害者保健福祉手帳の申請方法

精神障害者保健福祉手帳の申請手続きの流れは以下の通りです。

  1. 申請書を取得する:市(区)役所の担当窓口で精神障害者保健福祉手帳の申請書を入手します。担当者が何をすればよいか何が必要かを教えてくれます。その指示に従い、申請手続きをしましょう。
  2. 医師に診断書を書いてもらう:診断書を心療内科医や精神科医に書いてもらいます。保険適用外なので実費がかかります。
  3. 必要書類を揃える:申請書に必要事項を記入し、診断書や証明写真、代理人なら身元証明書など必要な書類を揃えます。
  4. 申請書を提出する:必要書類を揃えたら、市(区)役所の窓口に申請書を提出します。提出後、審査が行われます。
  5. 審査結果の通知:申請後、1か月程度で審査結果が通知されます。交付される場合は、市(区)役所で手帳を受け取れます。

以上が、精神障害者保健福祉手帳の申請手続きの流れになります。

申請に必要な書類

繰り返しになりますが、手帳の申請には心療内科医や精神科医の診断書が必要です。診断書を書いてもらうためには、初診日から6か月以上経過していなければなりません。

精神障害者保健福祉手帳の種類

精神障害者保健福祉手帳には、障害の程度に応じて3つの種類があります。

  1. 精神障害者保健福祉手帳 1級:障がい者本人だけでは日常生活を営むことが難しく、常にサポートを必要とする状態。家事や清潔保持、金銭管理などの援助が常時不可欠。
  2. 精神障害者保健福祉手帳 2級:日常生活のサポートが常に必要というわけでないが、食事や身だしなみなどにおいてアドバイスを必要とする状態。通院などルーティン化された外出は1人でも可能なことがある。
  3. 精神障害者保健福祉手帳 3級:対人関係を築くことができ、日常的な家事、手続きやサービス利用などは十分とはいえないものの障がい者本人でできる状態。就労も可能なことがある。

それぞれの種類によって、受けられるサービスの程度が異なります。

障害等級が1級の場合、医療費の自己負担が軽減できたり、駐車禁止除外車ステッカーの交付を受けたりできます。一方、障害等級が3級でも、税金の減免や公営住宅の申込みにおいて一定のサポートを受けられます。

手帳の有効期限は2年

精神障害者保健福祉手帳には有効期限があり、交付を受けた日から2年間が有効です。

有効期限が切れる3か月前から更新が可能です。更新には、かかりつけ医の診断書が再度必要になります。

交付後に福祉サービスを利用するには

手帳を受け取ると、さまざまな福祉サービスを利用できるようになります。しかし、申請しなければ恩恵を受けられないものが少なくありません。

どんなサービスを受けられるかは、市(区)役所へ申請に行ったときに教えてくれることが多く、交付されたときに窓口でそのまま必要な手続きをしてもらえます。

しかし、関係するすべてのサービスを詳細に教えてくれるわけではないので、「障害者福祉のあらまし」を自分で調べるのがよいと思います。各自治体のWEBサイトで公開されています。

手帳交付後に利用できるサービス

精神障害者保健福祉手帳の交付後に受けられる主なサービスを紹介します。以下に紹介するサービス以外にも各自治体で提供しているサービスがあるので、くわしくは窓口等で確認してください。

税制上の特例処置

所得税の障害者控除

所得税の障害者控除があります。控除額は手帳の障害等級によって決まり、2,3級は27万円(障害者)、1級は40万円(特別障害者)の控除を受けられます。

確定申告をする際、確定申告用紙の「勤労学生、障害者控除」欄に該当金額を記入し、添付用紙に手帳のコピーを貼り付け、提出します。

住民税の障害者控除

住民税の申告をするときも障害者控除を受けられます。控除額は2,3級(障害者)が26万円、1級(特別障害者)が30万円です。

利子非課税制度

銀行預貯金等の利子が非課税になる「障害者等のマル優」、国債や地方債の利子が非課税になる「障害者等の特別マル優」を利用できます。

非課税の対象となる上限額はそれぞれ350万円のため、両方利用できる人は合計700万円まで利子が非課税となります。

制度を利用するには、関係する金融機関や証券会社で手続きします。

携帯電話基本料の割引

携帯会社が行っている割引制度を利用して基本月額料などを安くできます。

ケーブルテレビ会社であるJcomは、テレビ・ネット・電話の総合サービスを提供しています。障害等級1級なら「ハートフルプラン」の利用で、それらサービス料金の割引きを受けられます。

公共交通機関の運賃割引

市(区)役所で福祉乗車証を申請し交付されると、都や市が運営する公共交通機関を割引運賃で利用できます。1級は本人と介護者、2,3級は本人のみが運賃無料または割引となります。

JALグループANAグループでは国内線予約時の手帳提示で運賃が割り引かれます。スカイマークAIRDOソラシドエアなども割引を実施しています。

JRは精神障害者保健福祉手帳による割引制度はありません。大手私鉄では、西鉄近鉄が手帳の提示で割引を受けられます。

自治体によっては、タクシー代助成やガソリン代助成を実施しています。対象となる障害等級は自治体によって異なるので、くわしくは窓口で尋ねてみてください。

駐車禁止除外指定車ステッカーの交付

精神障害者保健福祉手帳1級であれば、警察署で駐車禁止除外指定車ステッカーの交付を受けられます。有効期間は3年です。

重度障害者医療費助成制度

精神障害者保健福祉手帳1級は、市(区)役所で申請すると「重度障害者医療費助成制度」を利用可能です。

保険診療にかかった医療費の自己負担金が軽減されます。負担額の上限は所得に基づき、上限額は各自治体によって違います。

助成対象は一般治療だけで、精神科や心療内科などでの認知症診察・治療にかかる医療費には適用されません。

精神疾患の医療費は「自立支援医療(精神通院医療)」を使うと自己負担金を軽減できます。そのため、認知症と診断されたら、できるだけ早く「自立支援医療(精神通院医療)」を申請しましょう。

その他

NHK受信料の減免や障がい者向け公営住宅の申込みなどのサービスも利用できます。

まとめ

認知症と診断されてから6か月以上経過すると、精神障害者保健福祉手帳の申請が可能になります。申請は診断書などの関係書類を揃えて、市(区)役所の窓口に行きます。

交付を受け、福祉サービスを利用すると、節税や生活費の節約が可能です。手帳の所有はメリットしかありません。前向きに考えることをおすすめします。

精神障害者保健福祉手帳に対する疑問、認知症介護に対する不安、手帳を持つメリットがほかにもあるよという情報など、コメント欄に書き込んでいただければ嬉しく思います。

介護
記事を書いた人

認知症介護3年目。

お読みくださりありがとうございます。
分かりにくかった点がありましたら、コメント欄にご記入いただければ嬉しく思います。今後の改善に繋げたいと思います。

加えて、役に立ったなぁと思えた点がありましたら、一言添えていただければとても励みになります。よろしくお願いいたします。

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